MCTオイルとは
MCT(Medium Chain Triglyceride)は中鎖脂肪酸を示しており、分解されやすい油との認識が広まっています。
食事として摂取する栄養素で三大栄養素と言われる糖質、タンパク質、脂質のうち1gにおけるエネルギーが一番大きいものが脂肪で9kcal/gです。糖質、タンパク質が4kcal/gであるのと比較すると倍近くエネルギーがあります。
その脂質ですが体内ではより小さく分解され取り込まれエネルギーとして利用されます。脂質は分解され脂肪酸になりさらに分解されていくわけですがこの分解のスピードが早ければ体内での効率的な利用ができることになります。
脂肪酸
脂肪酸は長鎖脂肪酸・中鎖脂肪酸・短鎖脂肪酸、さらには分子の構造の違いから飽和脂肪酸・不飽和脂肪酸のように分類されます。また炭素数の長さで炭素数2~6は短鎖脂肪酸、8~12は中鎖脂肪酸、14~は長鎖脂肪酸というように分類されます。
不飽和脂肪酸
不飽和脂肪酸は植物や魚の脂に多く含まれ、飽和脂肪酸は主に動物性の脂肪に含まれます。
不飽和脂肪酸は一価と多価に分けられ、一価不飽和脂肪酸にはオレイン酸としてオリーブ油に多く含まれ、血液中のLDLコレステロールを下げる効果があります。
多価不飽和脂肪酸はn-3系とn-6系に分けられ、n-3系にはα-リノレン酸、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)があります。
α-リノレン酸は体内でEPA、さらにDHAと変化し、またn-6系のリノール酸は体内でアラキドン酸を作り出し、イコサノイドという生理活性物質にもなります。
またα-リノレン酸・リノール酸・アラキドン酸は体内で合成できないため、必須脂肪酸と呼ばれています。
これらの効果として
・動脈硬化や血栓の予防
・血圧を下げる
・LDLコレステロールを減らす
などのさまざまな作用を持っています。
しかし、熱や光、空気で酸化しやすいため注意が必要です。
高温で調理すると大気中の酸素と反応し過酸化脂質となるので、食物として摂る場合、揚げ物や炒め物よりドレッシングなどに向いているといわれています。
短鎖脂肪酸
短鎖脂肪酸で聞きなじみのあるものでは酢酸やプロピオン酸、酪酸などが挙げられこれらはヒトの大腸において、消化されにくい食物繊維やオリゴ糖を腸内細菌が発酵することにより生成されます。短鎖脂肪酸は大腸から吸収され、水やミネラルの吸収のためのエネルギー源や肝臓や筋肉、腎臓などの組織でエネルギー源や脂肪を合成する材料として利用されます。また腸内を弱酸性の環境にすることで有害な菌の増殖を抑制し、大腸の粘膜を刺激して蠕動運動を促進することなどさまざまな機能があることが知られています。
長鎖脂肪酸
長鎖脂肪酸は飽和脂肪酸の一部と不飽和脂肪酸を示しており、聞きなじみのあるものにエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)、オレイン酸などが挙げられます。EPAは魚油、オレイン酸はオリーブオイルなどに含まれオレイン酸はほぼ毎日体内に摂取しています。
また、上記のようにα-リノレン酸・リノール酸・アラキドン酸は体内で合成できないため、必須脂肪酸と呼ばれており、動脈硬化や血栓の予防、血圧を下げる効果やLDLコレステロールを減らす作用も報告されています。
中鎖脂肪酸
中鎖脂肪酸にはカプリル酸(C8)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)などがあり、牛乳やココナッツなどのヤシ科植物の種子に多く含まれます。
長鎖脂肪酸が小腸から吸収された後各臓器より段階を経てエネルギーに変換されるのに対し、中鎖脂肪酸は二重結合を含まない飽和脂肪酸であり炭素数が短いため小腸から吸収された後速やかにエネルギーに変換されるため、分解に時間がかからず体内での効率化は良いとされています。
また飽和脂肪酸は不飽和脂肪酸と比べ酸化に強いため加熱調理等にも向き、保存も常温で良いため使用しやすいといえます。
短鎖脂肪酸と中鎖脂肪酸は小腸から吸収され門脈を経て肝臓に輸送され、長鎖脂肪酸はトリグリセリド(TG)を形成しカイロミクロンに取り込まれリンパ管から全身を循環し肝臓を経てエネルギーを産生します。
この図からもわかるように短鎖脂肪酸や中鎖脂肪酸は体内において効率よくエネルギーに変換されることがわかります。
まとめ
ここまで脂肪酸についてみてきましたが長鎖脂肪酸が悪いというわけではなく、むしろ必須脂肪酸であるα-リノレン酸・リノール酸・アラキドン酸は動脈硬化や血栓の予防、血圧を下げる効果やLDLコレステロールを減らす作用も報告されているため、自身の生活習慣などで中鎖脂肪酸が適切な場合や長鎖脂肪酸を選択することが必要となる場面もあるということがわかります。
ただし注意点として脂質は糖質やタンパク質と比較してカロリーが高いため摂りすぎには注意する必要があります。
是非この機会に適切な脂質の摂取について見直してみてはいかがでしょうか。
参考資料