エネルギー

タンパク質(アミノ酸)の代謝~エネルギーの生成過程~ アミノ基転移反応

タンパク質の体内での動き

タンパク質の代謝回転はタンパク質の合成と分解の両過程からなっており、体の中のほとんどのタンパク質は常に合成される一方で分解されています。これにより異常なタンパク質や不要なタンパク質は除去されています。
1日のタンパク質の合成と分解は約300gとされており、体タンパクのうち主として筋タンパクの1~2%以上を代謝回転しています。
外因性のタンパク質は100gとされ、内因性タンパク質の吸収と合わせて160gが消化管から吸収されます。

タンパク質の行方

健康な状態下で食事バランスのよい正常成人は少なくとも除脂肪体重1㎏あたり0.6~0.9gのタンパク質が必要であるが、タンパク質摂取量が必要量を超えた場合、過剰となったアミノ酸は糖質や脂質と異なり蓄積されないためアミノ酸プールの過剰分は分解され、グリコーゲンや脂肪に変換されます。また、遊離アミノ酸は新しいタンパク質の合成やエネルギー基質として用いられ、尿素・アンモニア・ケトン体・グルコース・二酸化炭素に代謝されます。

アミノ酸

各アミノ酸はアミノ基転移によりTCAサイクルに入り、肝臓ではアルブミン、フィブリノーゲン、γグロブリンのような血漿タンパクを合成します。骨格筋では筋タンパクが合成されタンパク質の貯蔵源として重要であり、侵襲下などでは血漿アミノ酸の供給に利用されます。筋肉は全身の遊離アミノ酸の半分以上を作り出し、また肝臓は過剰な窒素の処理に必要な尿素回路酵素を持つため、筋肉と肝臓は循環しているアミノ酸の濃度の維持に重要な役割を果たしています。
なお、アミノ酸から新たに合成されたプリン塩基やクレアチンなどの窒素含有化合物はその後それぞれ尿酸、クレアチニンに分解されるが遊離アミノ酸プールには戻らない。

分岐鎖アミノ酸(BCAA)

食事直後にはタンパク分解が減少するため、相対的にタンパク質の増加につながり、このとき内臓組織はアミノ酸を放出しその一方で骨格筋はアミノ酸を取り込むがどちらの場合も関わるのは主に分岐鎖アミノ酸(BCAA)です。
BCAAは窒素代謝において特別な役割をもっており、空腹時には脳のエネルギー源を供給し食後は主に筋肉に取り込まれ、また肝臓に貯蔵される。食間にはタンパク分解が優勢となるため、相対的にタンパク質の減少につながります。
遊離アミノ酸のうち特にアラニンとグルタミンは筋肉から循環血中に放出されます。
糖原生アミノ酸であるアラニンは血漿中の窒素輸送の担体であり主として肝臓で取り込まれ脱アミノされてグルコースに変換されます。グルタミンは腸管および腎臓に取り込まれるがその大部分はこれらの臓器によってアラニンに変換されます。
タンパク質の代謝回転速度はその種類によって異なり、半減期は30分~150時間以上と様々で、腸粘膜、血清、肝臓、腎臓、膵臓などでは半減期が平均10日、筋肉、皮膚、軟骨では半減期が平均180日、細胞内タンパク質のヘモグロビンは一定の寿命をもち120日です。

タンパク質の種類

摂取するタンパク質の種類や糖質や脂質の摂取量などもタンパク代謝に影響を与えます。
カゼインなどのslow protein(吸収の遅いタンパクで利用率が低く抗異化タンパクともいわれる)は消化管内での持続時間が長く門脈へのアミノ酸のおだやかな放出を促し、これにより尿素合成が減少し食後のタンパク質増加を改善します。
また、ホエイプロテインのようなfast protein(吸収の早いタンパクで利用率が高く同化タンパクともいわれる)は高齢者においては窒素レベルの改善に役立ちます。
絶食時には内因性基質(糖質、脂質、タンパク質)を動員し、それらを消耗することで代謝レベルが保たれ、最初の24時間で肝臓と筋肉においてグリコーゲン分解により主な糖質は使われます。

アミノ酸の代謝

アミノ基転移反応

対になったα-アミノ酸とα-ケト酸を相互変換する反応でアミノ酸のアミノ基が遊離のアンモニアを精製することなく他の2-オキソグルタル酸(α-グルタル酸)に移行して新しいアミノ酸(L-グルタル酸)を生じ、可逆的に反応してアミノ酸生合成でも機能します。
リシン、トレオニン、プロリンおよびヒドロキシプロリン以外のすべてのタンパク構成アミノ酸はアミノ基転移反応を受け、この反応により合成中間体はほかの過剰なアミノ酸から窒素を受け取ります。
代表的なアミノ基転移酵素にアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)とアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)があり、これらには補酵素としてピリドキサールリン酸(ビタミンB6の補酵素型)が必要です。

酸化的脱アミノ反応

酸化によりアミノ基が取れて2-オキソ酸とアンモニアを生じる反応で、アミノ酸脱水素酵素やアミノ酸酸化酵素により起こり、前者はNAD、後者はFADを補酵素とします。生じたアンモニアは毒性があるため尿素回路で尿素に変換され尿中に排泄されます。

尿素回路(オルニチン回路)

肝臓の尿素回路ではアミノ酸の脱アミノ反応で生じた遊離アンモニアを無害な物質(グルタミン、カルバモイルリン酸)として取り込むだけでなく排泄しやすい形に転化し、基質として1分子のカルバモイルリン酸とアスパラギン酸が流入しそれぞれ1分子のフマル酸、尿素および無機リン酸が生成されます。尿素回路のオルニチントランスカルバモイラーゼ反応はミトコンドリアマトリックスで起こるが他は細胞質で起こりアミノ酸からの糖新生と固く連結して動いている。


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