食事はもとより何をどのくらい食べるかという視点より考えられていますが、そこに時間軸を考慮した食事が時間栄養といわれています。
ヒトの生体リズムは光刺激、食事、運動などの様々な要因によって調節されています。そこで時間栄養というものを詳しく見ていきながら時間栄養の活かし方を考えていきます。
●「時間」について
時間は大きく見ていくと、
生涯などの長い時間>一年単位・季節で分けた時間>月単位>週単位>日単位>時間単位などと考えることができます。
生涯単位
生涯単位でみたときに若い頃の体格から歳をとるにつれ体重が増加した人は疾患による発症リスクが高いという報告もあります。これは40~69歳の男女が20歳の時より5.0kg以上体重増加した場合に糖尿病発症リスクが2.6倍に増加するというものです。その他に関連する疾患として高血圧や心血管疾患、がんなどもリスク因子といて挙げられており、この事象はBMIとも相関関係にあります。
一年単位・季節単位
季節は体重や生活習慣に影響するかというものがあり、結果は季節によって体重・生活習慣は変動するというものです。
日本は春夏秋冬があり、気候の変動があります。またクリスマスなどのイベントもあり、日本においてはゴールデンウィークなどの長期休暇もあります。このような気候変動やイベントによって体重・生活習慣は変動することがわかります。
さらには気候変動・イベントにより睡眠時間など1日の活動時間にも変動があることが考えられます。Google検索で「ダイエット」と季節を比較すると年始とゴールデンウィークにヒットが集中していることも一因として考えられます。
週単位
週単位で体重と生活習慣に変化があるかというものでは一週間の中でも体重と生活習慣は変動するといわれます。
これは週のうち月~金は活動時間が多く、土・日などの休日では活動時間が減少することが影響し、それにより睡眠時間は増加します。週単位のイベントとしては仕事と休日が影響し、活動量は仕事で増加しエネルギー摂取量は休日で増加します。
日単位
1日単位でみると時間制限食は減量効果と血糖調節には部分的に効果がある可能性があるが検討の余地あるというものです。時間制限食とは短期間の絶食、断続的断食を指します。
1日単位で食事を考えると生活サイクルによって早朝に食事を摂る人もいれば朝食を摂らない人もいます。朝食欠食は肥満と関連しているとの報告があり、またメタボリックシンドローム、糖尿病、高血圧、虚血性心疾患の発症と関連しているとの報告もあります。
朝食欠食はその後の昼食後の血糖値に影響し高値を示し、また食事の質も影響を及ぼし、朝食に高脂肪食を摂ると昼食後には血糖値が変動したという結果があります。
さらには夜型の食生活は脂肪燃焼に影響し、夜間から睡眠時の脂肪燃焼を抑制するという報告があります。そのため夜型の食生活の場合には脂肪燃焼されにくいということを念頭において生活する必要があると考えられます。
ではトレーニング(運動)はいつやれば効果的なのかという疑問もあります。
朝と夕のトレーニング効果は運動時間によって反応性が異なるが運動タイミングに関わらず筋力と筋肥大は改善していたという報告があります。通常は午後に運動パフォーマンスは向上しますが、朝方に運動をすることで朝のパフォーマンスを向上させることで一日を通して全体的なパフォーマンスの向上を見込めます。
まとめ
・若い時よりも体重増加をした人は疾患発症リスクが高い
・季節によって体重や生活習慣は変動する
・1週間の中でも体重と生活習慣は変動している
・時間制限食は部分的には効果がある可能性が示唆されている
・朝食欠食は摂取量、体重、代謝に影響する
・夜型食生活は代謝に影響する(夜間から睡眠時の脂質燃焼を抑制)
短期的な絶食や断続的な断食である時間制限食は食事の手法として注目されており、同じエネルギー制限量であれば、通常の食事支援と時間制限食に大きな効果の差はないと考えられます。食事の時間に着目するといったシンプルな手法であるため取り組みやすさの利点はあると考えられますがそれによるリバウンドも考慮する必要があります。
食事のタイミングは生体内の基質酸化のバランスに影響する可能性があり、朝方は脂肪燃焼量が多い傾向を示しています。
このtermでは栄養を時間という軸から考えてきました。食事は何を食べるか、どのくらい食べるかを主軸として捉えられていますがそこに「時間」という軸を加えて考えることで
より食生活を通してライフスタイルを考える参考になればと思います。
Kripke DF, et al. : Arch Gen Psychiatry. 59(2):131-136.2002