みなさんが普段食べているいわゆる炭水化物はすべてが同じ炭水化物であるとは限りません。
同じ炭水化物でもお米とパスタでは吸収される量が異なってきます。さらには温かいや冷たいなど温度によっても変わってきます。
ではそのような状況下で炭水化物はどのような違いが現れるのかみていきます。
炭水化物
まず炭水化物(糖質)は単糖類、オリゴ糖(二糖類、三糖類など)、多糖類に分類されます。
単糖類はそれ以上加水分解されない糖類でグルコース(ブドウ糖)やガラクトース、フルクトース(果糖)などが挙げられます。
二糖類は2分子の単糖がグリコシド結合した糖類で甘味料に用いられるスクロース(ショ糖)はフルクトースとグルコースがグリコシド結合したものです。
また、ラクトース(乳糖)は牛乳などに含まれる二糖類でグルコースとガラクトースが結合しています。
2~10個の単糖がグリコシド結合した糖類をオリゴ糖とよび、グルコースのみから構成されている単純多糖はデンプンでアミロペクチンとアミロースでできています。
デンプン
ではデンプンについてさらに詳しくみてみます。
デンプンはグルコースがα-1.4結合した直鎖状のアミロースとアミロースにグルコースがα-1.6結合で分岐したアミロペクチンにより構成され、これらが水素結合によりミセルを形成することで構造を維持しています。
デンプンは唾液中のα-アミラーゼによりほとんどが加水分解され小腸までの経路により単糖まで分解された後、小腸から吸収されエネルギーとして利用されていきます。
このような食事から摂取した糖質や体内で産生されたグルコースはリン酸化されてグルコース6-リン酸となった後に主に3つの経路で代謝されます。
・解糖経路→クエン酸回路(TCAサイクル)
・ペントース酸経路
・ウロン酸経路
糖質の代謝
糊化と老化
さてデンプンに注目してきたわけですが普段食すことの多いお米はご飯として口に運ぶまでにどのように変化しているでしょうか。
お米を水で洗い炊飯することでご飯がふっくらと炊きあがります。これは加水・加熱によりデンプンの水素結合が切断されミセル構造が壊れたことで糊化(アルファ化)したと表現できます。この糊化という現象によりアミラーゼでデンプンを分解することができ、エネルギーとして利用可能となります。
糊化することでヒトは口で噛んでデンプンを分解し、糖にすることで甘くて美味しいと感じることができます。
また、この糊化の状態から放置し冷却すると水分が抜け、老化(ベータ化)が起こり水素結合を形成することで再びミセル構造を作ります。デンプンの老化はご飯をパサパサにし、食感も悪くなり美味しさがなくなります。水分量が30-60%、温度2-10℃以下で最も老化速度が速くなると言われています。
しかし、糊化と老化は可逆であり老化したデンプンを加水・加熱することで再び糊化の状態に戻すことができます。
老化を避けた保存方法は現在では多くの保存食品などに応用されています。
2-10℃を避ける→急速冷凍(0℃以下)
水分を維持する(60%以上)または水分量を減らす(30%以下)→カップラーメンなど
また、デンプンの成分のうちアミロースはアミロペクチンより老化しやすいためタピオカ粉などは小麦粉やコーンスターチより老化しやすいと言えます。
トレハロースやマルトースなどのデンプンの分子と構造が似た糖類を用いることで規則的な構造をつくりにくくして老化を防ぐことができます。
これまでデンプンの糊化や老化についてみてきましたがヒトが美味しいと感じるのはやはり糊化された状態のデンプンであることに間違いないでしょう。
老化したデンプンは消化される部分が少なく体内を通過していきます。これは老化したデンプンでなくとも、消化されないデンプンであれば体内には吸収されないと言えます。
お米とパスタを比較したとき、どちらが糊化されやすいか考えるとお米と即答できます。これはそれぞれを潰したときの粘度をみれば明らかです。
また、GI値を比較しても白米が76に対しパスタは58でパスタの方が血糖値が上昇しにくいことがわかります。
パスタは調理方法により冷製パスタなどで食べれば糊化状態を避け、吸収量を減らせる可能性があります。
つまりパスタは体内に吸収されにくい食材であると言え、食事を吸収量の少ないものや形体に変えることで糖質としてのカロリーを抑えることができると考えられます。
引用:
Laura Chiavaroli, et al., "Effect of pasta in the context of low- glycaemic index dietary patterns on body weight and markers of adiposity: a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials in adults." BMJ Open, doi:10.1136/bmjopen-2017-019438, 2018
Thomas MS. Wolever, et al., "Glycemic index is as reliable as macronutrients on food labels." The American Journal of CLINICAL NUTRITION, Vol.105, Issue3, 768-769, 2017
Wallace H. Yokoyama, et al., "Effect of Barley β‐Glucan in Durum Wheat Pasta on Human Glycemic Response." Cereal Chemistry, Vol.74, Issue3, 293-296, 1997